家庭防災計画 統合版(第二版) 2026年8月

広域避難計画書

千葉県船橋市福島県福島市 自家用車・約300km

想定首都直下地震・千葉県北西部直下地震・太平洋側海溝型地震・富士山噴火 移動手段自家用車 ルート5系統+変則3+横連絡2

大規模地震の発生後に、船橋市から福島市へ車で移動するための事前計画。発生し得る地震ごとの影響、5本の避難ルート、出発判断の基準、車載品までを一冊にまとめた。印刷して車と自宅に一部ずつ置き、年に一度(3月11日または9月1日)家族で見直す。

第一章

三つの大原則

原則一

発災直後は、動かない

大地震直後の72時間は救助と消火の時間。信号は止まり、道路は倒壊物と規制と渋滞で車での避難はほぼ不可能、かつ緊急車両の妨げになる。東日本大震災では首都高閉鎖で都内一般道の平均時速が6.2kmまで落ちた。まず命を守り、自宅か市内の避難所で待機する。広域移動は道路啓開が進んでから。唯一の例外は津波が迫っているとき。

原則二

緊急交通路を知っておく

震度6弱以上の大地震では警察が即座に規制を敷き、主要道路を緊急車両専用にする(災害対策基本法76条)。首都直下では環七の内側へ一般車は進入禁止。千葉県内も緊急輸送1次路線(国道14号・16号・6号・京葉道路・東関道)が規制対象で、当初は使えない前提で計画する。東日本大震災の一般開放は常磐道(三郷〜水戸)5日・いわきまで10日・東北道13日。解除の一報は常磐道側から入る可能性が高い。

原則三

ガソリンは常に半分以上

震災後はスタンドに長蛇の列ができ、供給正常化まで1〜2週間かかる。タンク半分(約300km分)あれば福島まで走り切れる。日常から「半分を切ったら満タン」を習慣に。停電時はカード・ETCが使えないことがあるので現金も車に。

第二章

想定する地震と、この計画への影響

首都直下地震 M7級/30年以内に70%程度と評価
東京東部〜湾岸で震度6強〜7(都の2022年想定で死者最大6,148人)。船橋も震度6強(内閣府・都心南部直下想定)、臨海部で液状化。木造密集地の大規模火災、環七内側は一般車流入禁止。都内方向は完全に不可だが、本計画のルートはもともと東京を通らない。県内の幹線(14号・16号・京葉道路)も当初は規制と渋滞。
数日待機ののち BCを軸に
千葉県北西部直下地震 M7.3想定/船橋直撃型
県の最新想定(2026年5月公表)では県全体で死者最大約2,400人・全壊焼失約7.6万棟。船橋市単独の想定は死者790人・全壊焼失約1.7万棟(市防災アセスメント)。市内は南部・東部の低地で震度6強(台地部は6弱)、南部低地は液状化リスク大 — 2011年にも湊町・栄町・日の出・若松で液状化した実績。東京湾内でも船橋沿岸の最大津波水位T.P.+3.6mの想定がある。この場合は出発以前に自宅と家族の安全確保が先。車と道路が無事なら、被害の全体像がわかった数日後に移動する。
被害の軽い方角を選ぶ A〜E 情報次第
茨城県沖・福島県沖
海溝型地震 M7〜8級/発生頻度が高い
太平洋沿岸に津波。常磐道の沿岸区間と国道6号は通行止めの可能性。国道6号の日立〜いわき約50kmは津波警報だけで予防的に通行止めになる運用(2025年7月のカムチャツカ地震でも半日停止)。東日本大震災クラスなら沿岸ルートは長期間使えない。内陸ルートで大きく西から回る。
A沿岸は避ける BCD
原子力災害の併発 福島第一原発(廃炉作業中)
地震に伴い事象が発生した場合、双葉郡の常磐道・国道6号が閉鎖される。福島市は第一原発の約60km北西にあり、西回りなら影響圏を大きく避けて到達できる。
A使用不可 BCDで西回り
富士山噴火(広域降灰) 宝永級を想定/内閣府2020試算
降灰の主軸は偏西風で神奈川・東京・千葉方面(西〜南)。乾いた灰10cm・雨天なら3cmで普通車は走行不能になる。一方、内閣府の3ケースいずれでも茨城・福島方面への有意な降灰は想定されておらず、北東へ向かう本計画のルートは影響が小さい
東側ルートを優先 AEなど東寄りで
第三章

避難ルート全体図

実線=高速中心/破線=一般道
利根川 江戸川 首都直下・千葉県北西部直下 強い揺れ+交通規制(環七内側 流入禁止) 津波警戒(太平洋沿岸) 利根川沿い 液状化・橋梁注意 湾岸液状化 帰還困難区域 6号・常磐道は通過可/駐停車禁止 千葉 茨城 栃木 福島 埼玉 太平洋 東京湾 磐越道(乗換) 北関東道(乗換) ルートB 常磐道→圏央道→東北道(内陸高速・本命) B B ルートA 常磐道→相馬福島道路(最速・沿岸) A A ルートC 国道16号→新4号バイパス→国道4号(無料幹線) C C ルートD 国道294号(内陸バイパス)→白河から国道4号 D ルートE 国道6号→水戸→国道349号(阿武隈・最終手段)/点線は国道118号の別動 E 東京 柏IC 野田 取手 つくばJCT 久喜白岡JCT 古河・境 小山 常総 下妻 筑西 真岡 土浦 石岡 水戸 常陸太田 日立 大子 棚倉 いわき 浪江 南相馬 相馬IC 霊山 川俣 船引 宇都宮 大田原 伊王野 那須 白河 須賀川 郡山 二本松 船橋(出発) 福島市(目的地) 避難ルート A 常磐道→相馬福島道路 B 圏央道→東北道 C 16号→新4号→4号 D 国道294号 E 6号→349号(阿武隈) E′ 118号の別動 強震・規制/帰還困難区域 津波警戒沿岸 冬季積雪・凍結注意 高速の横連絡(乗換用)
模式図 — 位置・距離は概略。実走行はカーナビと紙地図を併用。ルート上にカーソルを載せると強調表示。
第四章

ルート詳細

所要時間は平常時。災害時は2〜3倍を見込む
A

常磐道 → 相馬福島道路

最速高速中心沿岸経由
距離
約320km
平常時
約4.5時間
災害時目安
9時間〜
高速料金
約5,890
船橋 県道8号・国道16号 柏IC 常磐道 約255km 水戸 いわき 南相馬 相馬IC 相馬福島道路(無料) 霊山IC 国道115号 福島市街

強み

  • 最短時間。船橋から柏ICまで近く、乗ってしまえば一本道
  • 相馬福島道路(2021年全線開通)は無料で、相馬から福島まで約45分
  • 東京方向を一切通らない。首都直下の「規制の環」から離れる方向
  • 3.11の一般開放は常磐道(三郷〜水戸)が5日と最速。規制解除の一番手になりやすい

注意

  • 広野IC以北は大部分が対面通行(4車線化工事中)。事故一つで通行止めになる
  • 広野〜浪江は帰還困難区域を通過(通行可だが駐停車禁止・給油とトイレなし)。水戸〜いわきで満タンと休憩
  • 津波・原子力事象があれば沿岸区間ごと閉鎖される
  • 冬は霊山付近の山越えで積雪・凍結
このルートを使うとき高速道路が開いていて、太平洋沿岸に津波・原子力の影響が出ていないとき。
接続メモ:相馬福島道路(無料・約46km)は桑折JCTで東北道に接続する。福島市街へは霊山ICで降りて国道115号が早い。柏IC〜相馬ICは254.7km・ETC普通車5,890円(実測値)。途中で塞がれたらいわきJCT→磐越道(71km・4車線)→郡山JCTで東北道=Bに乗り換え。並走する国道6号が下道の受け皿(津波警報中は不可)。
B

常磐道 → 圏央道 → 東北道

本命高速中心全線内陸
距離
約340km
平常時
約5時間
災害時目安
10時間〜
高速料金
8,000〜9,000
船橋 柏IC 常磐道 つくばJCT 圏央道 約54km 久喜白岡JCT 東北道 約225km 宇都宮 白河 郡山 福島西IC 福島市街

強み

  • 全線内陸。津波・原子力リスクと無縁
  • 東北道は国の復旧最優先路線(3.11「くしの歯作戦」の背骨)。災害後、最初に開く大動脈
  • 圏央道経由なら東京にも埼玉南部の強震域にも近づかない
  • 圏央道はつくばJCT・久喜白岡JCT付近とも4車線化済み(残る対面通行は坂東〜つくば中央のみ、2026年度内解消予定)

注意

  • Aより20〜30km遠回りで、料金も高い
  • 首都直下の直後は圏央道・東北道も緊急交通路に指定され、一般開放を待つことになる(3.11の東北道は13日)
  • 大雪時は東北道・国道4号に予防的通行止めの実例(2025年3月・那須〜西郷)。冬は天候を見てから出る
このルートを使うとき高速再開後の第一候補。沿岸に少しでも不安があるならAではなくこちら。
変則B′(平常時の最短・約300km):京葉道路→外環道→川口JCT→東北道。普段の帰省はこれが最短だが、都心寄りの強震域を走るため首都直下の後は使わない
変則B″(柏方面が使えないとき):谷津船橋IC→東関東道→大栄JCT→圏央道(神崎・稲敷)→つくばJCTから先はBと同じ。東(成田方向)へ出るので江戸川も柏も通らずに離脱できる。約30km遠回り、稲敷付近に対面通行が残る。
C

国道16号 → 新4号バイパス → 国道4号

無料の主軸一般道
距離
約290km
平常時
約7時間
災害時目安
12時間〜
料金
無料
船橋 国道16号 柏・野田 境大橋(利根川) 新4号バイパス 五霞・古河 小山 宇都宮(東側通過) 国道4号 白河 郡山 福島市街

強み

  • 無料。新4号は片側2〜3車線で「無料の高速」と呼ばれる規格
  • 沿線にガソリンスタンド・コンビニが無数にある
  • 東北道と並走しており、高速が開いた時点で乗り換えられる
  • 新4号は宇都宮市街を通らず東側を抜ける

注意

  • 災害時に誰もが考える王道ルート。大渋滞前提で臨む
  • 停電時は信号が止まり、大きな交差点ほど混乱する。日中に走る
  • 利根川の橋が関門。境大橋・新4号新利根川橋・国道4号利根川橋の3択を紙地図で確認しておく
  • 16号は県の緊急輸送1次路線。発災直後は規制対象になりうるので、解除を確認してから使う
このルートを使うとき高速がまだ緊急交通路指定で使えない時期に出発する場合の本命。
D

国道294号

混雑回避一般道
距離
約280km
平常時
約7.5時間
災害時目安
10時間〜
料金
無料
船橋 取手 国道294号 常総 下妻 筑西 真岡・益子 茂木・那須烏山 大田原・伊王野 白河 国道4号 福島市街

強み

  • 4号より交通量が少なく、信号の少ない快走区間が多い
  • 内陸で津波と無縁。C(4号系)が麻痺したときの並行予備線

注意

  • ほぼ片側1車線。事故や倒壊物一つで詰まる
  • 冬季は白河付近の峠で凍結
  • 給油ポイントを決めておく(下妻・真岡あたりで半分維持)
このルートを使うときCの16号・新4号が渋滞や不通のとき。地図で見れば遠回りに見えて、実際は流れる分だけ速いことが多い。
E

国道6号 → 水戸 → 国道349号(阿武隈縦貫)

最終手段一般道山岳路
距離
約300km
平常時
8〜9時間
災害時目安
12時間〜
料金
無料
船橋 国道6号 取手・土浦・石岡 水戸 国道349号 常陸太田 塙・鮫川・古殿 船引 川俣 国道114号 福島市街

強み

  • 4号系(西)と6号沿岸(東)の間を貫く「第3の縦軸」。両方が使えないときに生きる
  • 東日本大震災でも内陸迂回路として機能した実績
  • 台地・山地を走り、津波・液状化と無縁

注意

  • カーブの多い山道。夜間・冬季(積雪・凍結)は走らない
  • ガソリンスタンドとトイレが少ない。水戸で満タン・トイレ・食料が鉄則
  • 一部に道幅の狭い区間
このルートを使うとき他がすべて不通・大渋滞のときの切り札。必ず日中に、燃料満タンで。
変則E′(国道118号):水戸→常陸大宮→大子→棚倉→須賀川で国道4号へ合流。349号より道が良く走りやすい。349号が不通ならこちら。

横の乗換路 — 1本に固執せず、東西の縦軸を行き来する

磐越道(いわきJCT⇔郡山JCT・71km・全線4車線)— Aが浜通りで塞がれたらBへ移る北の橋。下道の並走は国道49号
北関東道(友部JCT⇔岩舟JCT・約65km・全線4車線)— 常磐道側⇔東北道側を茨城・栃木で乗り換える南の橋。下道の並走は国道50号
相馬福島道路⇔国道115号— 終盤の阿武隈越えは2本ある。どちらかが止まってももう一方で福島市へ
第五章

出発判断 — 三つのフェーズ

PHASE 0

発災〜72時間

動かない
  • 身の安全と家族の安否確認(171・LINE)
  • 在宅避難か市内の避難所へ。車は動かさない
  • ラジオ・防災アプリで被害の全体像をつかむ
  • 車の損傷と燃料残量だけ確認しておく
PHASE 1

3日〜1週間

準備と見極め
  • 通れた道マップ・JARTICでルートの生死を確認
  • 給油の列に並ぶのはこの時期。満タンにする(2011年は都内の行列解消まで約11日)
  • 水・食料・簡易トイレ・毛布・現金を積み込む
  • 出発日とルートを決め、福島側の親族に伝える
PHASE 2

道路啓開後

移動実行
  • 早朝に出発。明るいうちに山間部を抜ける
  • 高速開放済ならAかB。一般道のみならC(混雑でD・E)
  • 燃料が半分になったら見つけ次第給油
  • 経由地を通過するごとに家族へ一報

出発してよいのは、四つ揃ったときだけ

  1. 燃料が300km分(半タンク)以上ある
  2. 選んだルートに当日の通行実績がある
  3. 天候が持つ(冬の山越えは日中のみ)
  4. 同乗者全員の体調と持病薬を確認した

家族ルール(書き込んで使う)

目的地(福島市の受け入れ先):
市内の一時集合場所:
安否連絡の順番: 災害用伝言ダイヤル171
選んだルート:/出発予定:
第六章

状況別クイック判断

状況第一候補次善メモ
高速が使える・沿岸被害なし A相馬経由 B東北道 最速。相馬福島道路は無料
高速が使える・津波/原発影響あり B東北道 C新4号 沿岸に近づかない
高速がまだ規制中(発災後数日〜2週間) C新4号 D294号 3.11の一般開放は常磐道5日〜・東北道13日
富士山噴火(首都圏に降灰) A相馬経由 E349号 降灰の主軸は西〜南。北東ルートはほぼ無傷(内閣府2020)
4号系も大渋滞・不通 D294号 E349号 Eは日中・満タンで
冬季(積雪・凍結) BC Aの霊山越え・Eの阿武隈は避ける。スタッドレス必須
夜間しか動けない C幹線 原則は翌朝まで待つ。山岳路は走らない
第七章

チェックリスト

車に常備しておくもの

  • 紙の道路地図(関東・南東北)— 通信断でも使える唯一の地図
  • 簡易トイレ+トイレットペーパー — 災害渋滞の必需品
  • 飲料水2L×人数分・行動食(渋滞1日分)
  • モバイルバッテリー・シガーソケットUSB充電器
  • 毛布または寝袋(冬は防寒着追加)
  • 現金1〜2万円(千円札と小銭)— 停電時はカード・ETC不可。高速料金の現金払いにも備える(柏〜相馬5,890円)
  • 救急セット・常備薬・お薬手帳のコピー
  • 軍手・LEDライト・ホイッスル・雨具
  • 牽引ロープ・ブースターケーブル・折りたたみスコップ
  • 冬季:スタッドレスまたはチェーン (11〜3月。福島県は積雪凍結時の非装着走行が条例違反)

出発直前にやること

  • 満タン給油・タイヤ空気圧・オイルの確認
  • ブレーカーを落とす・ガスの元栓を閉める
  • 戸締まり・貴重品(通帳・保険証・印鑑)携行
  • スマホ充電100%・オフライン地図を保存(Googleマップで千葉〜福島を事前DL)
  • 選んだルートと出発時刻を親族へ連絡(171にも録音)
  • 近所への声かけ(同乗できる人がいないか)
  • ラジオの受信確認(NHK第1 594kHz)
第八章

移動中の情報源

日本道路交通情報センターJARTIC — 通行止め・規制
050-3369-6666(全国共通)/www.jartic.or.jp
NEXCO東日本高速道路の開通・規制
ドラとら www.drivetraffic.jp/料金・ルート検索:ドラぷら www.driveplaza.com0570-024-024
通れた道マップ実走行データで生きている道がわかる
「トヨタ 通れた道マップ」で検索。災害時は必ず出発前に確認
災害用伝言ダイヤル
171/web171(www.web171.jp)— 毎月1日・15日に体験利用できる
ラジオ
NHK第1 東京594kHz・福島1323kHz/bayfm 78.0MHz/ふくしまFM 81.8MHz
自治体防災ポータル
千葉県防災ポータル・船橋市防災ポータル(ハザードマップ=液状化・津波)・福島県道路総室の道路規制情報